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◇愛情教育、この指とまれ◇その83◇松瀬留美子先生の臨床心理系の授業vol.4 竹澤 伸一

 「時々、学生たちに、『あなたたちも、いつかはパパやママになるかも知れないでしょ?』と迫って(?)います。」(笑)と松瀬先生。同感。私もよく学生に言い放ちます。「立派な職業人になることも大事だけど、その前に、子どもたちに尊敬される親になることのほうが、もっと大事だよね。」って。ある面、今時は大学が最後の砦のような気がします。

 心理学の、特に臨床系の学習には、よく絵本が登場します。松瀬先生は絵本を活用した人間心理へのアプローチを探究しています。たとえば『わたしのいもうと』(松谷みよこ・作 味戸ケイコ・絵)という絵本。妹さんは小学校の時いじめを受け、学校に通えなくなります。部屋に閉じこもって家族とも口を聞きません。いじめた子たちは中学生になり、高校生になり、「元気に」学校に通っていきます。ある日、妹さんは独りでひっそりと亡くなります。「わたしとお母さん」は、折り続けていた鶴を、そっと妹さんの棺に入れます。事実だけが淡々とつづられた物語です。

 この絵本を活用した授業で、受講した学生はきっと様々なことを思うでしょう。そしておそらく松瀬先生は、学生たちが将来親になって、我が子に『わたしのいもうと』を読んで聞かせるような、そんな人間になってもらいたいと思っているのだろうなと、ふと思いました。

(つづく)