私見就業力

2012年3月23日
コラム就業歳時記

 コラム欄への投稿を締めくくるに際し、「就業力」という言葉の意味を考えてみたい。

 私が就職したのは40年ほど前になるが、その当時「就業力」という言葉を聞いたり使ったりした記憶はない。そもそも、当時私が在学した理科系の学部では、大学への企業や地方自治体からの求人に対して、学生側が選択できるという恵まれた状況でもあったことから、大学での成績や、推薦していただける教員の心証といったものが「就業力」だったのかも知れない。もちろん、公務員試験にチャレンジする場合は、受験勉強によって「就業力」を向上させようとした。

 今日の文科系学部における「就業力」とは、甚だ難解で手強い概念であるように私には思えて仕方がない。学生たちは、一応どこかへ就職したいとは思うのだろうが、どこでもよいとは思っていないようである。つまり、自らの希望と適性に応じて選択した志望先から採用されるために備えることが「就業力」向上のようである。しかしながら、大学の成績がトップであっても、難関の資格を取得しても、そのことが直ちに就職につながるとは限らないようであるし、地縁や血縁関係のコネで就職が決まる例も決して稀ではないだろう。

 私見として敢えて披露させていただくなら、「就業力」とは「人間としての魅力」なのではないだろうか。かつて、ある企業の人事担当の方からお聞きした話では、エントリーシートを見る際には、出身大学などの属性情報は敢えて見ることを避け、エントリーした本人の個性をまず見極めて、キラリと光る何かを持っていると感じる人を探すそうである。人を採用する際に、その人となりを見ようとすることは至極当然のことであり、人から好かれ、将来を見込まれる「人間としての魅力」を養うことが、「就業力」向上の大きな柱ではないだろうか。

 今年で卒業生を送り出すのが9回目になるが、これまで学生たちがどれほどの「人間としての魅力」を養って旅立って行ったのかを顧みると、いささか忸怩たる思いに捉われてしまうのは、何とも情けないものがある。ただ、一つだけ引き続き助言していきたいことは、大学を旅立っても、学ぶことには終わりがないのであるから、先達を敬い、自らを奢ることなく「人間としての魅力(=就業力)」を向上させる努力を止めないで欲しいということである。

学生支援推進部会 加藤哲男

文部科学省WEBサイト

大学生の就業力育成支援事業
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kaikaku/shugyou/1292891.htm

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