グローバルな資格社会

松下奈美子

世の中には実に多くの資格が存在する。例えば、大学卒業といった学歴から、運転免許から医師免許、建築士資格のように、行政法上一般的には禁止されている行為に対し、その資格を有する者に限ってその行為を許可する国家資格、あるいはナマハゲ伝道師認定試験のように特定地域の魅力を発信するための民間資格まで実に幅広い。

資格を持っていることがすなわち能力を有していることの担保とはいえないという議論もあるが、一定のスクリーニング機能を持つということは言えるだろう。

日本は、2000年10月にASEAN+日・中・韓経済閣僚会合において、アジア地域でIT技術者を対象とする試験制度を創設し、IT技術者に関する資格を国家間で相互認証することを通じてアジア各国のIT人材育成を支援し、IT人材の流動性の向上・有効活用を図る「アジアITスキル標準化イニシアティブ」を提唱し、採択された。これにより、インド、シンガポール、韓国、中国、フィリピン、タイ、ベトナム、ミャンマー、台湾、マレーシア、モンゴル、バングラデシュの12か国・地域との間で相互認証が行われている。

グローバル化が進み、これまで国内でしか通用しなかった資格が海外で通用するようになってきている。例えば、日本のIT情報技術者資格の1つである「基本情報技術者」は韓国の国家技術資格検定法が定める「情報処理産業技師」と同等資格と認証され、同様に日本の「応用情報技術者」は韓国では「情報処理技師」となる。2001年に日韓でIT資格の相互認証が始まり、その後この制度を利用して韓国から多くのIT技術者が来日した。

情報通信技術の発展により、働く場所も時間も従来と比べて拘束されなくなってきている。21世紀はアジアの時代ともいわれ、日本国内で働くという意識はもう過去のものになりつつある。資格なんて持っていても大して役に立たない、と言わずに、ぜひいろいろな資格取得に挑戦してみてほしい。