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◇愛情教育、この指とまれ◇その778◇ 令和の時代に挑戦しよう。 名産大3年生物語 vol.58竹澤 伸一

「私にとって、授業とは、今までは受けるものでした。しかし、名産大で、社会科公民科教育法の授業を受け、自ら授業づくりをしてからは、受ける・創る両面から、授業を考えることができるようになりました。」松村一輝くんは、含蓄(がんちく)のある言葉を語り出しました。

「私も、地球環境問題に前から興味があったので、再生可能エネルギーを軸に授業づくりをしました。その中で、1つの大きな問いを立てました。太陽光発電と原子力発電を比べて、特にその違いを指摘させるという問いでした。」

読者の皆さまが、松村くんの「問い」を受けたとしたら、両者の「違い」をどのように答えるでしょうか?思うに、太陽光発電は、いわゆるクリーンエネルギーの雄であり、世界中で実用化され、有益性が定着してきています。一方、原子力発電は、世の中に登場した際には「夢のエネルギー」ともてはやされ、日本でも一時は、全発電量のかなりの率を担っていましたが、今では往時の姿はなくなりました。もし、ステレオタイプの授業を展開してしまうと、将来有望な太陽光発電と、将来性が見えない原子力発電という二極構造になってしまいかねません。

でも、松村くんの授業構成は違っていました。模擬授業なので、受け手は同じ教職専攻学生です。

海千山千の強者(つわもの)ぞろいなので、「通り一遍の講義」は通用しません。そこで一計。あえて、「太陽光発電の欠点」と「原子力発電の利点」にフォーカスさせたのです。太陽光発電は正義のヒーロー、原子力発電は悪者という思い込みを、揺さぶる構成を仕掛けたのです。

けれども、ここからが授業は大変なのです。受け手の学生から出てくる発言に、的確な「返し」をしなければなりません。講義しかできない人、講義しかやらない人は、この「返し」の場面が無いので、目の前の学生が、自分の課題設定をどう受け止めたのか、知る由もないのです。

授業後、松村くんは言いました。「返せた部分もありましたが、対処できなかった場面もありました。確かな知識が不足していました。しかし、自分の持ち球が足らないのが自覚できたことが一番の収穫でした。」松村くん、そこですよ。その気づきが、教師を大きく成長させるのです。

(つづく)