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◇愛情教育、この指とまれ◇その797◇ 令和の時代に挑戦しよう。 名産大3年生物語 vol.77竹澤 伸一

「3年生物語」の総括を、「多対多のコミュニケーション」と「個対個のコミュニケーション」の関係を考えることで進めてきました。本日は、もう1つの観点、「人のために生きる」を通して、「3年生物語」を振り返っていきたいと思います。

「3年生物語」の登場人物の中には、たくさんの「人のために生きたい」学生が登場していました。二十歳をちょっと過ぎたばかりの大学生が、自分の人生の目標を、「人のために生きる」ことに置いているのです。常日頃から、「利他の心」を真剣に語る学生たちに囲まれていると、心が洗われる思いがします。

少し前に、アフガニスタンで亡くなられた中村哲医師のことを思い出します。国内の病院勤務の後、38歳でパキスタンに渡り、以来35年の長きに渡って、パキスタンそしてアフガニスタンで、医療そして土木事業に尽力されました。「水があれば、多くの病気と帰還難民問題を解決できる」という信念に基づいて、用水路建設に従事され、医師としての領分をはるかに超えた、現地での貢献を果たされたことは、多くの報道で接したところです。

私は、私が所属するNPOのご縁で、中村医師に2度お会いする機会がありました。あまり知られていませんが、中村医師はクリスチャンであり、日本国憲法第9条をとても大事にされる平和主義者でもありました。「紛争や内戦に対して、武力を以て臨むこと」の愚かさを、説いてやまない方でした。

その中村医師を追いやったのが銃弾でした。まったくもって、悔やんでも悔やみきれません。ここで、「利他の心」にあふれた、我が名産大生に、ぜひ言っておきたいことがあります。

残念ながら、世の中には、「利他の心」より、「利己の心」が勝ってしまう人が、必ず一定数存在するということです。中村医師を殺めた勢力は、水利権の問題で、中村氏を疎(うと)ましく思っていたという報道もありました。中村氏は、100%の「利他の心」から、アフガニスタン人のために水を引きました。しかし、報道が事実なら、一部のアフガニスタン人の「利己の心」、換言すれば「欲」にやられてしまったのです。

この「利己が利他に勝る」という現象は、気がつけばどこの世界にも組織にもあります。「人のために生きる」と表明した「3年生物語」の主人公の皆さんと、議論を深めていきたいと思います。

(つづく)