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◇愛情教育、この指とまれ◇その839◇アクティブラーニングで開花しました。 名産大4年生物語 vol.29竹澤 伸一

「トレーニングの経済的付加価値って、消防職員や消防団員にあてはまるのかな?」「消防職員は公務員だから、経済的付加価値っていう議論には乗れないんじゃないか?」「議論に乗れないっていうより、公共性のあるものを経済性で検討したらいけないんじゃないの?」廣瀨英司くんが、「消防筋肉」の研究内容を、当初ゼミの中で持ちかけた時に、他の研究同人(共同研究仲間)から出てきた言葉です。私も、いったんはなるほどなあと思いました。

しかし、廣瀨くんは敢然と言いました。「確かにみんなの言う通り、消防活動には利益という経済性はないかも知れない。けれどね、火災で建物が消失したら、経済的損失は計り知れないし、地震や津波で町が破壊されても、それは同じだよね。それを食い止めたり、減らしたりするのも、広い意味では経済的活動と呼べないかな。そして、これが一番大事なんだけど・・。」

ここで廣瀨くんは、いったん間を置きました。他のゼミ生も、私も、食い入るように見つめます。

「何と言っても、最大の経済的付加価値は、人命救助に尽きると思うんだ。人命以上の価値って、この世の中にあるだろうか。」

一同、水を打ったように静まり返りました。廣瀨くんの一言が、その場の空気を一変させたのです。

「そうか、人命救助に勝る付加価値はないよな。」「廣瀨くんの一連の発表の中には、消防筋肉を鍛える意味が、ずいぶん詳しく語られていたよね。平均60㎏の体重の人を、自由自在に操る筋肉がなかったら、火事場から人を救い出すことはできないって。」「いわゆるマッチョな部分と、俊敏さの部分と、両方を兼ね備えているのが消防筋肉なんだよな。これを鍛えるトレーニングには、確かに経済的付加価値があるよね。」

ゼミ生と同時に、私も大いに学ばせていただきました。しかも廣瀨くんは、決して頭でっかちではなく、消防団員として数々のトレーニングを重ねているのです。自分で調べ尽くし、知り尽くした「消防筋肉」の意味を、日々考えながら訓練に励んでいるのです。理論を実践で検証し、しかもアウトプットによって議論の俎上(そじょう)にのせる。典型的なアクティブラーニングの1つです。

(つづく)