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◇愛情教育、この指とまれ◇その896◇紙上討論、アクティブラーニングについて本音で語り合う。 vol.16竹澤 伸一

御年88歳の恩師の、便箋23枚に及ぶ手紙の続きです。

「・・・君(注、竹澤のこと)がずっと作成している『生徒・学生1人1人のプロフィール・ノート』が、確実に活きた場面として印象深いのが、地域環境認知論の授業だと思う。当初、君は、君もまちづくりに関わってきた千葉県市川市と、現に君がいる愛知県尾張旭市の環境政策の違いを軸に、授業を組み立てようとしていたよね。WHO(世界保健機関)が推奨する健康都市宣言を、日本国内でしている数少ない都市の2市だから、君が考えたコンセプトには、大いに意味があったと思っていた。(中略)しかし君は、授業に参加した学生のプロフィールを検討して、方針転換をしたよね。参加学生の出身地に、面白い特徴を発見した君は、大胆に授業計画を見直して、学生の出身地と尾張旭市との比較というコンセプトにスイッチした。この柔軟性こそが、君の言うアクティブラーニングの肝(きも)だよね。(中略)しかも君は、学生のディスカッションを誘発するために、川・景観・ごみ・農業という、討論すべき観点を提示した。もちろん、この観点が提示できた背景には、入念な下調べがあったはずだ。(中略)アクティブラーニングを、本質から理解していない輩(やから)は、『活動あって中身なし』などと揶揄(やゆ)するが、参加学生の願いと、学生のプロフィールと、授業の達成目標をマッチングさせられるプランを持っている教師は、そういるものではない。この点、君は、大いに自信を持って良い。(中略)このことを書いて良いかどうか迷ったが、あえて書くことにする。己の学問の切り売りしかできない教師は下、己の学問の面白さを学生に伝え、己に近づけることができる教師は中、学生の学び欲求を感知し、そこに己の学問を近づけることができる教師は上、だよ。(後略)」

恩師のご厚情、肝に銘じて、「紙上討論」のエンディングに向かって、今しばらく進めたいと思います。

アクティブラーニングの「一般的特徴」の3番目、「学生による高次の思考(分析・総合・評価)」を引き出すための手立てとして、恩師の言う『学生の学び欲求の感知』があります。恩師に背中を押される形で告白しますが、私は、毎回の授業ごとに、参加学生の「プロフィールノート」を見返して、そこに新たな事項を継ぎ足しています。これをやらないと、授業のアクティブ度が「0」に近づく恐怖を覚えるのです。

(つづく、あと104回)