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◇愛情教育、この指とまれ◇その972◇名産大生、5年後、10年後の夢を語る。 vol.72竹澤 伸一

「今、コロナ禍で、今までふつうと思っていた日常の多くが崩れ去ってしまいました。アルバイトをしていても、お客さま対応に何倍も気を遣います。やりたいのだけれど、できないこともある。条件を整えるのに時間を要する。でも、やれることは何でもやりたい。そんなジレンマを抱える毎日ですね。」

三輪優斗(ミワ ユウト)くんは、見るからに葛藤と戦いながら語り出しました。私は、そんな三輪くんに敬意を抱きながら、話をすることにしました。

竹「こんな大変な世の中でも、精一杯の誠意を持ってアルバイトに対峙する三輪くんを、私は誇りに思いますよ。ところで、ここは大事だと思うんだけど、三輪くんが考えるふつうの日常って、例えばどんなことかな?」

三輪くん、右手をあごに添えて考え出しました。

三「連れ立って、会話をしながら仲良く店内に入ってきて、商品の品定めをペチャクチャやりながら続けて、そんなお客さまに笑顔を向けていると、常連さんではなくても話しかけてくれて・・。こんな些細なこともできなくなってしまいました。ソーシャルディスタンスは、頭では理解しているんですけど、人間の一番大切なものが、どんどん失われてしまうようで、なんか切ないです。」

読者の皆さま、これが三輪くんという人です。「人間の一番大切なもの」を大事にする人。

でも私は、思い切って三輪くんに聴いてみることにしました。

竹「三輪くんさ、今はとても5年後、10年後なんて考える心境ではないかな?」

すると、三輪くんの表情がキリリと引き締まってきました。

三「いえいえ、ありますよ、5年後、10年後・・。ごくごくふつうの生活を、周囲の人々を大事にしながら送ること。平凡で、ありきたりで、でも少し幸せなふつうの生活を送ることです。5年後はともかく、10年後には、自ら望んでつくった家族と一緒に暮らしているかも知れません。その時の世の中が、いったいどうなっているのかわかりませんが、とにかく、当たり前のふつうを大事にする人間でいたいと思います。」

ところが、次に会った三輪くん、あるこだわりを持って、私と向き合うことになりました。私は、三輪くんの奥深い一面を発見することになりました。

(つづく、あと28回)