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◇愛情教育、この指とまれ◇その750◇ 令和の時代に挑戦しよう。 名産大3年生物語 vol.30竹澤 伸一

「教員になることに真剣度が増してきました。そうしたら、教職の授業の1コマ1コマの意味が、すうっと入って来るようになって、楽しさがアップしてきました。」岸海渡くんは、弾むように語ってくれました。

では、岸くんが味わった教職の授業の1コマを、試みに再現してみましょう。「社会科公民科教育法」の授業で、岸くんは、「地球環境を考える」という単元名の授業づくりをしました。そのために、まず精密な学習指導案を作成したのです。学習指導案とは、要するに数時間分の授業計画書のことです。

まず単元全体を俯瞰(ふかん)してとらえます。「単元観」には、学ぶべき対象として、地球環境問題の全体像を、自分(岸くん自身)の言葉で表現します。次に「学生(生徒)の実態」には、この単元の内容に対して、学生(生徒)の既知事項と未知事項を、ある程度予想しながら書き込みます。この「実態」のとらえ方を誤ると、学習者を無視した上辺だけの講義になってしまうので、よくよく検討することが必要です。そして「指導観」には、学習者個々の興味を引き立てるような指導の工夫を書き込み、単元全体を指導者(岸くん自身)色に染めていくのです。

1つ、あえて余計なことを記します。AIに代替されない職業の1つに教員が挙げられる理由が、実はここにあります。即ち、「指導者色」に染めるという部分です。もっと言えば、岸くんの授業は、岸くんにしかできないのです。同じ単元を扱うにしても、指導者によって強調ポイントが異なります。また、授業を受ける生徒によっても、授業内容を微妙に変えていかなければなりません。目の前にいる学生(生徒)の実態を無視して、金太郎飴のような講義しかできない人は、すでにその時点で、AIに負けてしまっているのです。

岸くんは、いみじくも言いました。「教職の授業の1コマ1コマの意味が、すうっと入って来るようになった」と。本来、授業、大きくとらえるなら教育は、マンツーマンの個別化が理想なんだと思います。学習指導案をつくるのにも、理想としては生徒1人1人に個別化できれば良いのだと思います。しかしさすがにそこまでは、一般の学校では物理的に無理だと思います。だから、授業の中で、学習者同士を交流させて、互いの発言や制作の中から、自分とは異なるものを発見させる必要があるのです。すでに岸くんは、「授業(講義ではなく)」をする意味をわかっています。

(つづく)