非正規労働者の増加傾向と学生の就職指導

 2013年夏の参議院選挙結果は、衆参の「ねじれ解消」を主張した自公の勝利で終わった。選挙期間中、アベノミクス、円安、雇用促進、経済再生、所得増などの言葉が連呼されたが、しかし多くの市民の感覚からすると、どうも豊かさの実感がわいてこない。むしろ非正規労働者の拡大(過去最高の1813万人に達し、労働人口の35%を占める。正社員は13万人減)、限定正社員(勤務地や職種の限定)の導入、消費税の段階的引き上げなど、こちらの方がより切実に実感されるのは一体全体何故なのだろうか。

 大学の春学期(前期)に「キャリアデザインⅠ」という科目を担当しているため、とくに受講してくれている学生たちの卒業後の就職状況や立派な社会人としての自立可能性に関して、私自身の心配が先に立ってしまう。果たして、彼らは大学卒業後に正社員として就職でき、将来的には結婚し、安定した家庭を築き、家族を持つことができるのだろうかと。

 学生の社会人基礎力を高めるべくアクション、シンキングそしてチームワークの意義を教えつつ、また個人の付加価値を高めるべく数々の資格取得や検定合格を目指すようアドバイスをしている。

 しかしながら、実社会の実態を眺めてみると、非正規労働者の雇用条件は厳しい。とくに若者の給与はなかなか上がらない。厚生労働省の資料によれば、正社員の平均年収510万円に対して、非正規労働者は273万円で、二倍近い格差が出ている。大学を卒業して正社員になることの重要性を説いても、学生はなかなかピンとこない。しかし、金額の格差を突きつけられると、その顔つきが変わる。これに生涯賃金格差の話まですると、不真面目な学生でも真剣な顔つきになる。

 過日、海外からの報告として、大学に行かなくても出来る仕事に就いている者の割合が42%もあると言われていた。日本の学生が、大学卒業後に何らかの仕事に就いて、「こんな仕事をするなら、大学なんかに行かなければよかった」と言わないよう、個人的には願わずにはいられない。

吉川 智