鈴木正三の思想から「働く」ことについて考える

 鈴木正三(すずき しょうさん)は江戸時代初期の僧侶として知られる。彼は三河国足助庄(現在の愛知県豊田市)に生まれた三河武士であったが、四十二歳にして出家する。彼は自身の思想をまとめた著作『万民徳用』の中で職業倫理を説く。彼は商人の利潤獲得に厳しい自制を求めた。 

 『万民徳用』の中でも特にここでは「商人(あきひと)日用」に着目しよう。「一筋に正直の道を学すべし。正直の人には、諸天のめぐみふかく、仏陀神明の加護有りて、災難を除き、自然に福をまし、衆人愛敬、浅からずして万事心に叶うべし。」一方、「私欲を専として、自他を隔、人をぬきて、得利を思人には、天道のたたりありて、禍をまし、万人のにくみをうけ、衆人愛敬なくして、万事、心に叶うべからず。」と記されている。

 古い思想として封印しておくのではなく、その思想が現代社会にどのような効果をもたらすかという新しい観点から見直してみるとき、それが思いがけなく現代の産業界ニーズにつながってくるかもしれない。

岩瀬真寿美