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◇愛情教育、この指とまれ◇その133◇名産大のリアルな学生像 遠藤匠くん vol.1 竹澤 伸一

 昨年の6月中旬、私は愛知県内の郊外の都市にある中学校の教室にいました。名産大の教職課程の学生の、教育実習の巡回指導に訪れたのです。遠藤匠(エンドウ ショウ)くん。社会科での教育実習の最終週の1日でした。授業内容は豊臣秀吉の治世。課題に基づいて生徒に考えさせる構成です。

 ご存知のように、教員免許を取得する最後の壁が教育実習です。私も30余年前に母校の高校で体験しましたし、中学校教師として何十人も受け入れをしてきました。よく教育実習を終えた学生は、肩の荷を下したせいか甘美な思いでとともに実習を語ります。けれどまさに実習が進行中の学生はそれどころではありません。ましてや実習の最大の成果が試される研究授業(精錬実習)となれば、ふだんどんな度胸のある学生でも、文字通りビビるのが普通です。

 遠藤くんの実習校に到着後、お世話になっている校長先生や担当の先生方にご挨拶し、遠藤くんが待機しているはずの実習生控室に案内していただきました。入室した瞬間、私は一瞬我が目を疑いました。そこには間違いなく、キリリと正装した遠藤くんがいました。私に気づかず、一心不乱に授業ノートを見つめています。気配を察した遠藤くん。パッと振り返りました。私は思わず一言。「遠藤くん、だよね?」

(つづく)