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◇愛情教育、この指とまれ◇その592◇令和の時代を生き抜く 名産大1年生物語 vol.42 竹澤 伸一
Dくん(仮名)の続きです。Dくんは、「教育原理」の授業で西洋教育史に取り組んだ際に、イタリア人教育家(もともとは精神科医)のモンテッソーリに鋭く感応しました。モンテッソーリと言えば、「感覚教育」によって、知的障害児の知的水準を向上させたことで知られており、後に世界中に「モンテッソーリ教育」のメソッドを体現した「子どもの家」が創設されたことでも知られている、偉大な教育者です。
モンテッソーリ(教育)は、木製玩具によって子どもの五感を刺激します。感覚的な刺激を受けた子どもたちは、経験によって質量や数量、果ては言語的な概念さえ獲得していきます。感覚は子どもによって千差万別なので、100人の子どもがいたら100通りの「感覚と経験」によって、抽象的な概念にまでたどり着くのだと思います。
Dくんがモンテッソーリに惹かれたのは、なんとサッカーからのアナロジー(類推)でした。監督の考えを徹底させるチームづくりと、型にはめず選手の自主性を重んじるチームづくりを対比し、モンテッソーリの「感覚教育」との比較考察をしたのでした。
Dくんがすばらしいのは、一概に「感覚教育」を礼賛しないことです。「徹底型」のチームの良さも認めつつ、でも「やりがい」の点から、相対的に「感覚教育」に軍配を上げるのです。自分の日頃の経験と、偉大な教育者の治績とを、自分の中で比較考察して、知見を広げていくやり方は、大変「アクティブ」なものであると思います。
読者の皆さま、改めてDくんの将来の夢を思い出してみてください。「自分に子どもができたら・・」のところです。Dくんのことです。きっと、我が子の「感覚」を大事にしながら子育てをすることでしょう。そして、そのことができるDくんだからこそ、「今」を懸命に頑張れるのだと思います。
(つづく)