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◇愛情教育、この指とまれ◇その749◇ 令和の時代に挑戦しよう。 名産大3年生物語 vol.29竹澤 伸一

「竹澤先生に質問なのですが、誰一人知っている人がいない場所で、つまり、全員が初対面の相手に、気軽に話しかけることができますか?」岸海渡(キシ カイト)くんは、やや挑戦的に聴いてきました。私は即座に言いました。「はい、ふつうにできますよ。」

岸くんは、少し鼻白んだように見えました。けれども、すぐに態勢を立て直しました。

「名産大に来た当初は、同じ部活動の人間とか、授業で一緒になったことのある人間としか会話できませんでした。でも、この3年、名産大の内外で色々な経験を積むうちに、人間に対する怖さみたいなものがなくなってきて、初対面の人とでも、最低限の会話ができるようになりました。」

岸くんの、このお話を聴くうちに、私は自分自身の「旅」を思い出していました。およそ40年ほど前、計59か国を放浪していたことがありました。現在の情勢では、危なくてとても入り込めないような国や地域にも滞在していたこともありました。武器は「根拠のない強気」と、「自己流で身に着けた怪しげな英語」だけでした。都会や田舎町を移動する度に、出会う人々とはすべて初対面になります。つまり初対面が日常になるわけです。この感覚は、私にとって一生の財産になりました。どんな人に対しても、怖さをまったく感じないというのは、生き方自体が楽しくなります。

岸くんの現状は、たぶんですが、日本語がふつうに通じる相手に、気軽に声をかけられる段階ではないかと思います。でも、これだけでも大したものです。後述しますが、岸くんがめざしている職業には、うってつけの資質です。ぜひ、この資質を大事に育てていってほしいと思います。

ところで、話は変わりますが、初対面を済ませ、お互いに相手のことがわかってくると、人間という生き物は厄介なもので、色々な思惑が出てきます。より良い関係が構築できる相手なら、厄介を通り越して多くの実りを得ることができますが、自分を棚に上げて相手の足を引っ張ることばかりを考えている相手だと、事は難しくなります。

岸くんにもぜひ学んでほしいなと思うのは、初対面以降の人物の見極めですかね。「ジコチュウ」や「ジコアイ」、あるいは「ウエカラメセン」の塊(カタマリ)のような人は、敬して遠ざけるのが一番です。

(つづく)