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◇愛情教育、この指とまれ◇その761◇ 令和の時代に挑戦しよう。 名産大3年生物語 vol.41竹澤 伸一

「人の話をじっくり聴いて、1つ1つについて考えて、自分なりに理解していく。そういうところに、人間の成長があるのだと思います。」齋藤瑞樹(サイトウ ミズキ)くんは、一語一語噛みしめるように語ってくれました。「人の話を理解するところに、人間の成長がある」実に深い話です。

「複数の人と話していると、100%同じ話というのはないのですね。例えば5人の方と話していて、5通りの意見を聴いたとします。それと自分の意見を比べてみて、より正解に近いものを模索していくのです。この頭の中の作業を繰り返すことで、思考停止にならなくて済みますし、思考力が自然と身に着くと思うのです。」

齋藤くん、実に興味深い人です。残念ながら、私が知る多くの若者が、思考停止の状態に陥っていると感じています。そういう若者は、簡単に「ウマイ話」に騙(だま)されてしまいます。また、耳障りの良い言葉を連呼する、自称「指導者」に吸い寄せられて行ってしまいます。ふだんから、複数のことを同時並行して考える習慣が身に着いていないので、見た目や感覚に支配されてしまうのです。

「ところで、考えることは考えるのですが、それを自分の言葉に直して発言することは、今でも苦手です。竹澤先生のように、立て板に水のように言葉を発するには、どうしたら良いのでしょうか?」

齋藤くん、それは誤解ですよ。職業柄、私は人の前で話をすることが多いです。授業、講演、ワークショップ、対談、シンポジウム、各種の研究発表、履歴書などの相談、等々。でも、「100%うまく言えた、相手の方に伝わった」なんてことは、1度もありません。日々、後悔の連続です。例えば、会議で発言する時などにも、複数のシナリオを準備して持参します。たとえ短い報告でも、最低限のことは伝えなければならないので、シナリオを準備します。授業でも何でも、納得がいくまで何時間でも準備します。ただ一方的に伝えるだけの講義ではないので、色々なことを想定しながら、ギリギリまで準備します。

「どうしたら良いのでしょうか?」という齋藤くんの問いには、ごめんなさい、正解はありません。でも、齋藤くんは、「人の話がちゃんと聴ける人」です。基本は十分備わっているので、「人前で話す準備」を丁寧に繰り返していけば、きっと今よりうまくいくと思います。

(つづく)