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◇愛情教育、この指とまれ◇その785◇ 令和の時代に挑戦しよう。 名産大3年生物語 vol.65竹澤 伸一

「名産大に入学して、しばらくはチームスポーツに打ち込んでいました。しかし、思うところがあって、ある個人競技に転向しました。見える世界が激変しましたし、結果、コミュニケーションの取り方も、根本から変わりましたね。」平田拓光(ヒラタ タクミ)くんは、自分の数年を振り返りながら、ゆっくりと語ってくれました。私も、「激変」の意味を熟知しているので、うなずきながら聞きました。

「チームスポーツの時のコミュニケーションは、多対多のコミュニケーションが主流ですよね?チーム内や、相手チームとの複数のコミュニケーションが同時進行していて、その渦中で、自分の立ち位置を決めたり、役割を発見したりがあると思うんです。社会に出て、例えば企業に勤めたりすると、この多対多のコミュニケーションの渦が毎日のようにあって、まさに今、そのシミュレーションをしているんだという自覚がありました。」と、ここで、平田くんは、一度ブレイクしました。興味深い話に引き込まれた私は、先を促しました。

「ところが、個人競技に転向し、個対個の戦いに変わると、コミュニケーションシーンも一気に変わってきたのです。個対個なので、逃げ場がないかわりに、多対多の時のような、陰に回った駆け引きが、あまりありません。人間のむきだしの感情がぶつかり合うので、怖い感じがする反面、なんかうれしいような気もして、不思議な感覚を持ちました。」

多対多のコミュニケーションの場面では、建前と本音の交錯、まるでキツネとタヌキの化かし合いのようなことが、往々にして起こります。そこから人間不信に陥っていく人々も、残念ながら見かけます。でも、個対個のコミュニケーションならば、オフィシャルとプライベートの垣根を無理に越えない限り、煩わしい人間関係のもつれは、むしろ発生しにくいのかも知れません。

「個対個のコミュニケーションに変わって、なんか気が楽になったというか、肩の荷がおりたような気がしています。そうなると、例えばイベントを通して、他大学の学生と交流を持っても、ためらうことなく自分を表現することができるようになりました。」

もつれかけた人間関係の輪の中から抜け出すことができて、一皮むけた感じの平田くん。大海を泳ぎ切る体力と精神力を養うために、新たな修行を始めています。

(つづく)