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◇愛情教育、この指とまれ◇その917◇名産大生、5年後、10年後の夢を語る。 vol.17竹澤 伸一

「周囲に信頼される、その言動が安心感を持って受け止めてもらえる大人って、簡単にはなれないと思うんですが、先生は、どう思いますか?」

平田拓光(ヒラタ タクミ)くんは、思い出したように問いかけてきました。やや哲学的とも思える、この種の問いを、平田くんからかけられるのは、もう何十回目になるでしょうか。1年生の時の教養ゼミで出会い、3年生の専門ゼミで再び出会い、今は4年生。平田くんの、大学生活の多くの時間をモニターし、その都度問いかけに応じ、共に成長してきました。

竹「そうだね、絶対に簡単ではないと思うよ。私なんか、物心ついた時からおよそ半世紀、平田くんの言うような信頼と安心感を、自分自身に向かって問いかけてきたけど、どう考えても、未だに達成できてないしね。」

平田くん、腕組みをして、前方の一点を見つめ続けました。私が見るに、これが平田くんの思考が全開になっている表れです。

平「商社にインターンシップに行った時に、同い年であるはずの学生の中にも、言動の中に信頼と安心感を感じさせるような人間が、1人や2人はいたんですよ。グループディスカッションの時なんかに、そういう1人がいると、自分も含め、周囲の学生が途端に軽く見えるっていうか・・。集団の中で光る奴っていうのは、何か持って生まれたものがあるんですかね?」

平田くんは、腕組みの姿勢を、もっとタイトにしたように見えました。いよいよ真剣です。

竹「平田くんの言うような、オーラみたいなものを感じさせる人間は、確かにいるような気がする。で、たぶんなんだけど、そういう人間って、他人が見ていないところで、ものすごく努力をしているような気がするんだよね。勉強とかに限らず、自分の進行方向が導いてくれるので、今そこで何かをやることに対して、ほとんど迷いなく取り組めるのではないかと思うんだ。そういう導きみたいなものを感じさせる人間って、信頼感とか安心感を、周囲に自然に伝えるんじゃないかな。」

平田くん、ふうっと、硬くしばった腕組みを解きました。そして、「よし。」と一言つぶやきました。

(つづく、あと83回)