社会的手抜き

 集団で活動(作業)することの利点とは何でしょうか。思いつくだけでも、メンバーが力を合わせることで人数分以上の成果が期待できること、役割を分担することで作業効率が高められること、さらに複数によるチェック機能を活かしてリスクを回避すること…などが挙げられます。

 その一方で、集団で作業しているにもかかわらず思ったほど作業がはかどらない、もしくは成果が予測を下回るといったケースが見受けられます。このようなケースの多くは「社会的手抜き」として説明できます。

 「社会的手抜き」とは、集団で何らかの課題に取り組んでいると、メンバーの中に「他のメンバーが(作業を)やっているから、自分は適当にやっていても大丈夫だろう」あるいは、「誰かがやってくれるだろう」といった心理が働いて、力を抜いてしまう現象を指します。その結果、作業効率が低下する、あるいは期待通りの成果が得られないといった事態を招くことになります。

 この「社会的手抜き」の原因の一つに、「自分がいくら頑張っても、結局は集団の成果として評価される」すなわち、「自分の働きによる成果を実感できない」や「自分の働きぶりを評価してもらえない」といった問題が挙げられます。そのため、「頑張ったのに、それが認められないのは割が合わない」「働いても働かなくても同じ」と感じてしまい、課題遂行への意欲が低下してしまうと考えられます。このような悪影響を回避するには、「予め、一人ひとりに課題を分配する」「一人ひとりの貢献度を評価する」「一人ひとりの活躍を成果に反映させる」などの方法を取り入れることが有効とされています。

 おりしも、職業観や社会人基礎力の涵養を目的としたグループワーク形式の授業を担当しています。グループとしての成果が評価の対象ではありますが、頑張った学生に「割が合わない」と思わせないためにも、「一人ひとりの役割や貢献度」もしっかりと評価していきたいと思います。

羽岡 邦男