グローバル人材の育成に向けて

林 敬三

グローバル化の進展は人々の仕事や生活のあり方を根底から変えた。1990年代以降、中国をはじめとする新興国の急成長および日本経済の長期不況の下、大企業のグローバル戦略は急激に進展してきた。多くの中小企業は、大企業とともに海外進出や、コスト削減のために、中国などの新興国へ進出している。一方、このような経営環境の激変の中で、新しいビジネスチャンスを求めて積極的に国際化にチャレンジする中小企業も多い。このように、環境の急激な変化の影響で、近年の就職市場では、国際社会に通用するグローバル人材を求めることが主流になりつつあり、ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授が指摘した仕事のあり方の転換(ワーク・シフト)が発生していると考えられる。

このような国際社会に、特に近隣の中国やアジアの華僑経済圏に、通用するグローバル人材を育成するために、名古屋産業大学では、平成22年度より台湾で1学年対象の中国語語学研修を、平成26年度より2学年学生対象の短期(2週間)および3学年対象の長期(3ヵ月)台湾での海外インターンシップを実施している。

台湾での中国語語学研修の特徴は、まず、従来の語学研修のほかに、現地の大学や高校との交流を通して、学生の語学やコミュニケーション能力、情報や知識の活用能力を向上させる。目指していることは、「行萬里路勝讀萬巻書(万里の路を行くのは万巻の書を読むに勝る)」ということである。さらに、工業技術研究院、中華経済研究院、国家実験研究院などの研究機関や、華碩電脳(ASUS)、雄獅旅行社など業界のトップ企業を視察し、台湾政府の産業政策や業界の最先端技術・ビジネスモデルへの理解を向上させる。目指していることは、「百聞不如一見(百聞一見に如かず)」ということである。

台湾での海外インターンシップは、「中国語語学研修」および「インターンシップ」によって構成される。その特徴は、まず、日本語のできる現地学生と学内の学生寮に同居させ、あらゆる面からのサポートを受けながら、現地生活や学習に慣れるまでの時間の短縮と安心感の向上ができる。さらに、ウェイトリフティングや野球のスポーツ系学生が国立台湾体育運動大学、一般学生が台湾最大手観光ホテルチェンの苗栗兆品酒店、という台湾の最高レベルの場所でインターンシップを受けることである。特に、大学という教育現場でのインターンシップが目指していることは、「教学相長(人に教えることと、人から学ぶことは、互いに作用し合うという)」であり、より高い相乗効果が得られると考えられる。

実践的に学ぶことを重視する名古屋産業大学の語学研修及び海外インターンシップについての取組は、学生が国際的な人的ネットワークを構築するとともに、自らから前へ踏み出し力や問題発見・解決能力を向上させることができる。4年生になったら、未来の産業が求める希少なグローバル人材(一定の中国語の語力を持ちながら、海外で生活、学習、インターンシップを経験した日本人)として、就職活動に臨むことができると考えられる。