知と情報のあり方の変化

福田ムフタル

情報化時代とも言われる現在、情報という言葉を耳にすると、しばしばコンピュータと結びつけて捉えることがありますが、それはコンピュータが発明される以前から存在する概念である。我々はコンピュータを利用してその情報を以前よりも効率的に処理しているだけなのである。情報という言葉によく似ているものとして、データ、知識、知恵などがあり、それらの違いや関係を知ることによって、情報という概念をより深く理解することができる。

データ、情報、知識、及び知恵は階層的な関係にある。我々は、五感(視・聴・嗅・味・触)により、事物や事象を見出す。その事物や事象を言葉や数字などで表したもの、あるいは測定機器や観測機器などにより得られたものが「データ」であり、我々が判断や評価、あるいは意思決定を行うための根拠となり得る素材のようなものである。そのデータが、我々の意思決定の要因になったとき、それが「情報」になる。データが意味を持ったとき「情報」になるという言い方もある。情報やデータを体系的にまとめ、将来の一般的な判断や思考に活用できるものが知識である。そして、最上位階層にあるのは、「知恵」であり、物事の理を悟り、適切に処理する能力である。

これまで我々人間は上で述べたように事物や事象→データ→情報→知識→知恵という階層構造の形で知と情報に関わってきたが、インターネットの発達と普及によってそのあり方に変化が起きてきた。20世紀までは、様々なことをよく知っている人が「知」的な人でしたが、現在では、必要なことは「検索」すれば分かるようになり、知っていること自体がそんなに知的なことではなくなった。即ち、時代は「記憶」から「検索」へと変化したのである。これからは、知っていることを如何に組み合わせて新しいものを作り出すか、複数の人で共同作業をすることにより、如何に新しいものを作り出すかが重要になってくる。

参考文献:情報処理学会編集,「情報とネットワーク社会」,オーム社 (2011)