「域学連携」実践拠点形成モデル実証事業 第1次隊に参加して

 昨年末、本学が採択された「総務省『域学連携』実践拠点形成モデル実証事業」で、4人の学生と共に、6泊7日の行程で長野県阿智村を訪問した。本事業の目的は「長期滞在型農山村インターンシップを活用し、若い人材が地域の担い手活動を行うことにより、地域資源の見直し・発見・活用がなされ、全村博物館構想(阿智村構想)に沿った地域および地域産業の活性化につなげる」というものである。手短に言えば、学生が地域の人々と交流し、その地域で実際に就業体験をさせて頂き、また若い学生の目線での新しい地域資源の発見と観光振興や地域振興にプラスになるような提言を行うことである。

 とくに学生達が経験した就業体験に関していうならば、大きく二つに分けて説明することが出来る。一つは、尾張旭市保養センター「尾張あさひ苑」の従業員宿舎を宿泊施設としたことから、同苑の厨房において、主として食器洗い(朝と夜)を担当したことである。他の一つは、総務省「地域おこし協力隊」の方々にお願いして、現場での就業体験をさせて頂いたことである。

 阿智村には、幸い20代後半から30代前半の3人の若い協力隊員(3年目2人、2年目1人)が入っていて、彼らは住民票を移し、地域に定住・定着を図りながら地域の活性化に貢献していた。また彼らは、地域の女性と結婚し、それぞれ家庭を持ちつつ自立できる様々な方策を検討し、実行していた。4人の学生達は、3グループに分かれて、個々の協力隊員に二日間くっついて、自立して働くことの意味、都会から田舎への生活転換(人生転換)の動機、地元住民との交流など、仕事(協働作業)を通じて多くを学習した。現場は、主として山間部(標高1400メートル余)の屋外作業(黒豆の収穫、古代米の種籾選別、炭焼きなど)で、終日、氷点下4度という厳冬期にあったため、日頃、暖かい部屋で、のんびり生活をしている学生からするならば、すべてが想定外の状況であった思われる。日々の作業環境の厳しさもさりながら、隊員に対して支給される総務省の財政支援が3年で終了することから、その後の最低生活所得の確保、つまり「生きる」ためのツール探しは、単なる興味本位レベルではないものと感じられた。4人の学生達にとって、3人の協力隊員の考え方、生き様がどのように感じられたかはとても興味のあるところではあるが、それよりもなお人間として「生きる」「生きて行く」ことの現実の厳しさを学習したことは間違いないものと思われた。

吉川 智