日々是雑感

 すこし以前のことになりますが、文部科学省から「予測困難な時代において生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ」という審議まとめが出されました。この中で、私達の社会経済状況を簡潔な表現ながらも的確にあらわしている部分があったので、引用したいと思います。

 『経済を中心とするグローバル化や少子高齢化、情報化といった急激な社会の変化の中、労働市場や産業・就業構造の流動化などによって将来予測が困難になっている今の時代を生きる若者や学生にとって、大学での学修が次代を生き抜く基盤となるかどうかは切実な問題である。予測困難という点は産業界や地域社会にとっても同様であり、変化に対応したり未来への活路を見いだしたりする原動力となる有為な人材の育成を大学に求めるようになっている。
<中略>
 このような時代にあって、若者や学生の「生涯学び続け、どんな環境においても“答えのない問題”に最善解を導くことができる能力」を育成することが、大学教育の直面する大きな目標となる。』

 上記、審議まとめにおいても言及されていますが、間違いなく私たちはパラダイムシフトの時代を生きていると思います。若い学生さんに変化のスピードが激しい”今”を伝え、将来を生き抜くための力を身につける必要性について話をしても、自分自身の問題として考えてないと、『お話』、にしかならないことは事実だと思います。

 先日、興味深いことがありました。私の授業を履修している学生さんの態度が見違えるように変わっていました。これまでは、いわゆる出席のためだけに授業に出席をしているタイプの学生でしたが、一転して、授業課題は静かに考え、周囲の学生から尋ねられると親切に課題のポイントを教えるなど、以前の態度とはまったく違っていました。そこで、理由を尋ねたところ、「将来のことを考えたら、バカな事はできないでしょ!」とのこと。まさしく、「馬を水辺に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない」状況を自分自身で打開できることを目の当たりにしました。

 私たち教職員に求められているのは、まず、学生さんのやる気を喚起することによって、「生涯学び続け、どんな環境においても“答えのない問題”に最善解を導くことができる能力」を養成することが可能だと再認識しました。社会経済が急激に変化している中、高等教育機関である大学に属している一人として、有為な人材育成について、日々自問自答しています。

引用:
文部科学省、「予測困難な時代において生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ」(審議まとめ)http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/houkoku/1319183.htm

石橋 健一